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統合失調症様マウス

たまには論文メモ。
Neuron 5月3日号
Behavioral Phenotypes of Disc1 Missense Mutations in Mice
 DISC1変異マウス、ついにでた。ちなみにDISC=Disrupted in schizophrenia (schizophrenia=統合失調症)。

統合失調症について。
 よく言われるのが「4つのA」で、自閉(autism)、観念連合の障害(association)、両価性(ambivalence)、感情障害(affect)の症状で、社会的機能の低下を引き起こしてしまう。
陽性症状、陰性症状などという分類も使われている。いずれもドーパミンが関与しているらしいのだが、陽性症状ではドーパミンシグナルが過剰になっているのに対し、陰性症状ではD1受容体が減少しているなどドーパミンシグナルの低下が考えられる。
 近年大塚製薬からエビリファイという薬が出た。これはドーパミン受容体に対しpartial agonistとして働くので陽性症状、陰性症状のどちらにも効くことから画期的な薬だと言われている(回し者ではありません)。

 統合失調症は人口の約1%程度が罹患すると報告されているが、以下発症頻度の統計より遺伝的な要因がまず考えられる。

発症頻度
一般…1%
発症した人が三親等内…2%
発症した人が二親等内…2~6%
発症した人が一親等内…10数%
両親とも発症、一卵性双生児…50%位

 しかし一卵性双生児でも100%ではないということから、遺伝的な要因だけでは説明はできないのも事実。

 今回の論文のDISC1であるが、もともとはスコットランドの染色体転座家系より発見された遺伝子(注1)、つまり遺伝的要因に関しての研究。DISC1の機能に関しては、変異型の遺伝子導入によりPC12のneurite outgrowthのinhibition(注2)、Cortexの層形成異常(注3)等が報告されている。
またDISC1自体がPDE4Bの活性制御に関与する(注4)など色々な機能が報告されている。これらの報告は基本的にmolecular/cellularな機能についてのみ着目しており、behaviorに対する作用に関しては不明。

 今回の論文はこの変異型DISC1を持って生まれたマウスに関しての行動変化を報告している。

まずQ31LとL100Pの変異を持つ二種類のlineを作成した。
最初にPPIについて見ている(Fig2)。PPI(prepulse inhibition)…部屋にいて、いきなりドアを開けられると驚くが、事前にノックされると驚かない。これがprepulse (この場合はノック) inhibition。ところがある種の精神疾患患者ではノックされても驚く。
 31L/31L、100P/+、100P/100P、31L/100Pでprepulse inhibitionが起こらない(Fig.2A)。31L/31Lではbupropion (dopamin, norepinephrine reuptake inhibitor、抗うつ薬)でPPIが回復、clozapineとhaloperidol(両方とも統合失調症の薬)、rolipram (PDE inhibitor)は効かない。100P/100Pに関してはhaloperidolとclozapineが効くが、bupropionが効かない。またrolipramが効く、これには驚いた。
 他にもlocomotionなども見ていて、特に100P/100Pでhyperactivityが見られ、それはclozapineで抑制されている。他にもあるが、これらのことから100Pはschizophrenicだと。
 Fig3では強制水泳試験、31L/31Lで無働時間増大。100P/100Pは変化なし。他にもsociability、reward responsivenessも見ていて、31L/31Lはdepressiveだと言う結論に。
 また近年ではうつや統合失調症も脳の形態変化を伴うなどの報告があるが、mouseでMRIを取っている(Fig4)。有意差が無い群もあるが、一様に減少傾向。これはwhole brainなので部位毎の差異は不明。
 Fig5ではPDE4BのDISC1の結合(A)およびPDE4B活性(C)を見ている(Aはトリッキーな気がするが)。言っていることは、いずれのlineでもDISC1とPDE4Bのbindingが低下している。またPDE4B活性は31L/31Lで低下している。以前の報告ではDISC1がPDE4Bから離れることによりPDE活性が上昇すると言っているが、ここではbindingが減少していてなおかつ活性も減少している。
以上が結果。

 Rolipram (PDE4B inhibitor)を100P/100P mouseに投与するとPPIが上昇(wtに近づく)する。この時点では100P/100PではPDE4B活性は上昇しているものと思ったがそうでもない(Fig5C)。BaselineでのcAMP量ではなく、modulatoryに働くと考察。
 31L/31L mouseに関してはrolipramでrescueされないが、これはPDE4活性がすでに低下しているためにinsensitiveだとdiscussion。
 cAMPで考えると100Pと31Lでは逆方向だが、それがschizoaffectiveとdepressiveの違いなのか?例えばPPIの実験で、31Lで逆方向(forskolin?)などの実験もして欲しい(全身投与できるのかな)。
 DISC1とPDE4Bのbindingに関する前報とのdiscrepancyに関しては筆者達も困っている様子。
 本論とは関係ないがDISC1とドーパミンシグナルの関係はまだ分からない。ドーパミン受容体の下流のcAMPとかと結びつくのか?このマウスでドーパミンやドーパミン受容体がどうなっているのか気になる。
 
最後

our findings lend further credence to the growing recognition that schizophrenia and bipolar disorder share, at least in part, common genetic ethiologies and thus underlying molecular mechanisms参考文献

というのは知らなかった。
 ただし(少なくとも現時点では)depressionとbipolarは全く違う疾患だと考られているので今回の結果からはそれほど大きなことは言えないと思うのだが、もし正しいのなら興味深い。

(注1)
家系自体は統合失調症のみではなく、bipolar disorderやmajor depressionなども示す(これこれ)

(注2)
Disrupted-in-Schizophrenia-1 (DISC-1): mutant truncation prevents binding to NudE-like (NUDEL) and inhibits neurite outgrowth.
(注3)
A schizophrenia-associated mutation of DISC1 perturbs cerebral cortex development.
 なお「層形成の異常」という観点からはReelinなどとの知見とも一致する(異常に形成されたものは異なるものだが)。

(注4)
DISC1 and PDE4B are interacting genetic factors in schizophrenia that regulate cAMP signaling.
  1. 2007/05/08(火) 20:51:30|
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