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中枢神経系への低分子干渉RNAの経血管的送達

 ちょっと前の論文ですが。

Transvascular delivery of small interfering RNA to the central nervous system.
Kumar P, Wu H, McBride JL, Jung KE, Kim MH, Davidson BL, Lee SK, Shankar P, Manjunath N.
Nature. 2007 Jul 5;448(7149):39-43.

 中枢性の薬物を創る際、一つの関門となるのが「血液脳関門(BBB)」。活性体がここを通過できないがために工夫が必要な場合がある。例えばパーキンソン病治療薬のレボドパ(*1)。なぜ前駆体でなければならないのかというと、ドーパミン自体はBBBを通過しないから(*2)
 低分子量薬物はそのような(前駆体を用いるなどの)工夫が進んでいるが、遺伝子治療に用いられるsiRNAやDNAベクターなどについてはまだ方法が確立されていない。本論文ではそのような遺伝子治療を最終目標とし、siRNAを脳へと移行させる方法を報告している。
 これまでのgene therapyではsiRNAやDNAベクターを直接脳に投与するしか方法はなかった。しかしそれでは投与した部位周辺にのみとどまり脳全体に拡散しない、高侵襲性である、などの問題点があった。それに比べ、例えば静脈内に投与し、BBBを通過させることができればより低侵襲性である、簡便であるなどメリットがある。
 本論文ではravies virus(*3)が神経向性ウイルスであるということを利用し、ravies virusのglycoprotein (以下RVG)を用いてsiRNAを脳へと移行させることに成功している。RVGはニコチン性のアセチルコリン受容体に特異的に結合し、ウイルスが神経細胞に入り込むのをサポートする役割を果たすタンパク(29アミノ酸なので正確にはペプチドなの?)らしい。
 実際にRVGの細胞への結合を検討すると、Neuro2aには結合するが、BHK21、HEK293T、HeLA、CHOなどの細胞には結合しない。これは組織でも同様で、単離した脳標本には結合するが脾臓標本には結合しない。また、培養細胞を用いて、αブンガロトキシン(ニコチン性アセチルコリン受容体に結合する)によりRVGの結合量が低下することも確認している。
 また、RVGは感染した神経細胞のaxonを逆行性に輸送されるという特性を持つ。この特性故に、axonを辿り、脳全体にvirus vectorを拡散させるということが以前から知られているらしい。しかしRVGは核酸とは結合しないため、そのままではsiRNAを運ぶことはできない。そこで負にチャージされた核酸と親和性を持ち(具体的には正にチャージされている)、なおかつ細胞膜を透過することのできるshort peptideを用いる。ここではアルギニンを9個つなげたものを用いている(9R)。そしてRVGと9RをつなげたRVG-9RとsiRNAを混ぜると電荷により複合体を形成するらしい。そして培養細胞へと適用するとsiRNAはNeuro2aには入るがHeLaには入らない。凄い。なおsiRNAにはFITCがくっついているので分かるみたいです。
 次にFITC-siRNA/RVG-9R混合物をマウスの静脈に注射する。すると脾臓、肝臓では全くFITCの蛍光が観察されないが、脳では観察される。凄い。
 実際にノックダウン効果は見られるのか、という点も検討している。GFPトランスジェニックマウスに対し、GFP siRNA/RVG-9R混合物を投与するとGFPの発現量が脳でのみ低下する。ワイルドタイプマウスに対してSOD1 siRNA/RVG-9Rを投与しても同様の結果。最後に日本脳炎ウイルスに対する効果を見ている。マウスに日本脳炎ウイルスを感染させると10日後に死んでしまう(n=9全て)。しかし、日本脳炎ウイルス(1本鎖RNAウイルスらしい)に対するsiRNA/RVG-9R混合物を投与すると、ほとんど死なない(n=9で80%位の生存率なのでおそらく2匹だけ死んだのだと思う)。あとRNAiを使用する時に問題になりがちなのだが、この実験系ではインターフェロンは誘導されていない。
結果は以上。
 この方法の凄いところは「脳へも移行する」ではなく、「脳だけに移行する」という点。筆者達も述べているがいくつか改善できる点はある。また、"RVG-coated nanoparticle"を用いれば低分子量化合物(siRNAや抗体などではない、いわゆる「普通」の薬)を脳にのみ運ぶことができるかもしれない。あんなことや、こんなことができそう、とここには書けないような妄想が広がるが、ひとこと言うならば、「これは欲しい」。薬だけではなく、基礎でも役に立つと思います。

これも似たような話ですかね。
ウイルスの殻で包装、標的臓器に薬「宅配」 阪大開発(朝日新聞)

(*1)実体はL-Dopa。ドーパミンの前駆体。
(*2)L-Dopaは通過する。
(*3)狂犬病ウイルス

  1. 2007/08/11(土) 21:44:26|
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