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BDNFのSNP産物(BDNFVal66Met)と不安行動

論文メモ
主題はこちらの論文。

Genetic variant BDNF (Val66Met) polymorphism alters anxiety-related behavior.
Chen ZY, Jing D, Bath KG, Ieraci A, Khan T, Siao CJ, Herrera DG, Toth M, Yang C, McEwen BS, Hempstead BL, Lee FS.
Science. 2006 Oct 6;314(5796):140-3.

 端折ったつもりだったけれど若干長くなってしまったので折りたたみます。


 そもそも脳由来神経栄養因子(Brain Derived Neurtrophic Factor:BDNF)のアミノ酸変異体が脚光を浴びたのはこちらの論文がきっかけ。

The BDNF val66met polymorphism affects activity-dependent secretion of BDNF and human memory and hippocampal function.
Egan MF, Kojima M, Callicott JH, Goldberg TE, Kolachana BS, Bertolino A, Zaitsev E, Gold B, Goldman D, Dean M, Lu B, Weinberger DR.
Cell. 2003 Jan 24;112(2):257-69.

 変異としてはBDNFのアミノ酸配列の66番残基ValineがMethionineに変わっている。なおBDNFはprepro体として翻訳されるが、放出されるのはprepro体とprepro部位が切断されたmature体の両方。66番残基はprepro部位にある、すなわちmature体としてはアミノ酸配列に違いは無い。
 この論文ではおおまかに
1. BDNF (Met)の細胞内局在異常(neuriteへ移行しない)。
2. BDNF (Met)はBDNF(Val)に比べ、脱分極刺激による放出量が有意に低下。
3. BDNF (Met)保持者ではエピソード記憶のスコアが低下している。
の三点を明らかにした。
産総研からのプレスリリースはこちら

その後1と2に関しては

Variant brain-derived neurotrophic factor (BDNF) (Met66) alters the intracellular trafficking and activity-dependent secretion of wild-type BDNF in neurosecretory cells and cortical neurons.
Chen ZY, Patel PD, Sant G, Meng CX, Teng KK, Hempstead BL, Lee FS.
J Neurosci. 2004 May 5;24(18):4401-11.

などで詳細に調べられてきた。
 3に関しては他にも疾患(統合失調症、抑うつ)などとの相関が調べられているが人間での調査なのであくまでも相関に過ぎない。
例えばanxietyに関する論文として

BDNF variation and mood disorders: a novel functional promoter polymorphism and Val66Met are associated with anxiety but have opposing effects.
Jiang X, Xu K, Hoberman J, Tian F, Marko AJ, Waheed JF, Harris CR, Marini AM, Enoch MA, Lipsky RH. 
Neuropsychopharmacology. 2005 Jul;30(7):1353-61.

Association of a functional BDNF polymorphism and anxiety-related personality traits.
Lang UE, Hellweg R, Kalus P, Bajbouj M, Lenzen KP, Sander T, Kunz D, Gallinat J. 
Psychopharmacology (Berl). 2005 Jun;180(1):95-9.

などがある。
 ではMetを保持したマウスはどうなのか、という疑問に対する一つの答えということでようやく本題。
 野生型マウスのBDNFも該当部位のアミノ酸はヒトと同様Valなのだが、Metを保持するマウス(+/MetとMet/Met)を作製。するとBDNF自体の発現量(P21)は変わらないが、そのマウス由来の培養cortical neuronに脱分極刺激を与えると、予想通り、放出量が減少する。次に形態をみると、+/Met (hetero)、Met/Metでは海馬の体積が減少していること、neuriteのbranchが少なくなっていることが分かった。+/Met、Met/Metではcontext dependent-memoryが低下しているがcue-dependent memoryは変わらない。
 筆者らのメインの主張点はこの後のelevated plus maze (高架式十字迷路)、open field、novelty-induced hypophasia testの方。いずれの試験においてもanxiety related behavior (不安行動)を示す。Open fieldやnovelty-induced hypophasia testではfluoxetine (SSRI)の作用も見ている。野生型マウスではfluoxetineでanxiety related behaviorが少なくなるが、Met/Metマウスでは効かない若しくは効きが鈍い。すなわちfluoxetineが効き辛くなっている。なお特に薬物を処置しなくてもMet/Metマウスは野生型マウスに比べanxiety related behaviorを示す。これらの結果は全てBDNF+/-マウスのphenotypeと一致している。
 結果は以上。

 Met型のBDNFは人種によって分布がかなり異なることが知られている。
Ethnic difference of the BDNF 196G/A (val66met) polymorphism frequencies: the possibility to explain ethnic mental traits.
Shimizu E, Hashimoto K, Iyo M. 
Am J Med Genet B Neuropsychiatr Genet. 2004 Apr 1;126(1):122-3.

 日本人は保持している人の割合が高い。従って日本人は総じてうつ傾向である、ということにはならない。
 SSRIは人によって効いたり効かなかったりするらしいのですが、そのマーカーになるのかもしれないとdiscussion。Met保持者には効き辛い、とかでしょうか。自分がどうなのかは分かりませんが、気をつけねば。


 Val-Metとは関係ないが、BDNF-TrkBと抗うつ薬の話はいっぱいあるので一部を載せておく。

Chronic antidepressants potentiate via sigma-1 receptors the brain-derived neurotrophic factor-induced signaling for glutamate release.
Yagasaki Y, Numakawa T, Kumamaru E, Hayashi T, Su TP, Kunugi H. 
J Biol Chem. 2006 May 5;281(18):12941-9.

Brain-derived neurotrophic factor and antidepressant drugs have different but coordinated effects on neuronal turnover, proliferation, and survival in the adult dentate gyrus.
Sairanen M, Lucas G, Ernfors P, Castrén M, Castrén E. 
J Neurosci. 2005 Feb 2;25(5):1089-94.

Activation of the TrkB neurotrophin receptor is induced by antidepressant drugs and is required for antidepressant-induced behavioral effects.
Saarelainen T, Hendolin P, Lucas G, Koponen E, Sairanen M, MacDonald E, Agerman K, Haapasalo A, Nawa H, Aloyz R, Ernfors P, Castrén E. 
J Neurosci. 2003 Jan 1;23(1):349-57.

Regulation of BDNF and trkB mRNA in rat brain by chronic electroconvulsive seizure and antidepressant drug treatments.
Nibuya M, Morinobu S, Duman RS. 
J Neurosci. 1995 Nov;15(11):7539-47.

Brain-derived neurotrophic factor produces antidepressant effects in behavioral models of depression.
Shirayama Y, Chen AC, Nakagawa S, Russell DS, Duman RS. 
J Neurosci. 2002 Apr 15;22(8):3251-61.


 Novelty-induced hypophasia (Novelty suppressed feedingの方が馴染みがありますが、同じものだと理解しています)についてはこちらに詳しい。

This test assesses stress-induced anxiety by measuring the latency of an animal to approach and eat a familiar food in an aversive environment. The test is very sensitive to chronic antidepressant treatment but insensitive to acute treatment. Novelty suppressed feeding is therefore one of the few behavioral tests differentially sensitive to chronic vs. acute responses of antidepressants.


 抗うつ薬は効くのに時間がかかるが、よく用いられている強制水泳などのモデルではものの30分で効いてしまう。強制水泳が適切なモデルかどうかはわからないが、novelty induced hypophasiaの方は長期間投与しないと抗うつ薬の作用はみられないため、より適切なモデルじゃなかろうかと言われている。
 この方法を用いた論文としては次の「抗うつ薬の作用には神経細胞の新生が必要」だということを報告した論文などがある。

Requirement of hippocampal neurogenesis for the behavioral effects of antidepressants.
Santarelli L, Saxe M, Gross C, Surget A, Battaglia F, Dulawa S, Weisstaub N, Lee J, Duman R, Arancio O, Belzung C, Hen R. 
Science. 2003 Aug 8;301(5634):805-9.

Fluoxetine…商品名プロザック。SSRI (Selective Serotonine Reuptake Inhibitor)
  1. 2007/08/08(水) 19:39:58|
  2. 論文
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
<<ヒトの単為発生 | ホーム | 「和製メガファーマ」>>

コメント

初めまして。

少し関係ないのですが、質問させていただきます。
初めましてなのにすみません。

抗うつ薬はBDNFを介して抗うつ効果を発揮すると最近研究されてますが(私が思っているだけ?)
抗うつ薬がBDNFをなぜ上昇させるかについて知りたいのです。
なかなか論文検索しても見つからない、、、私の勉強不足・探索不足かもしれません。

抗うつ薬についての論文を探して読んでいるのですが、なかなか見つからないです。

文章がまとまっていなくてすみません。
これからお話を聞けたらと思います。

にゃんこ
  1. URL |
  2. 2014/06/05(木) 19:41:58 |
  3. にゃんこ #UFiXFJFU
  4. [ 編集]

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