日々の戯言〜研究とか薬とかST250とか〜

その他ダイエットや就職活動記など色々な出来事の備忘録

「スタチン生みの親」遠藤章さんにラスカー賞

 遠藤章さんと言えばコレステロール生合成の律速酵素、HMG-CoA reductaseを阻害するスタチンを発見された方として高名。「賞を取ったから評価する」というような風潮だが、遠藤さんの業績については改めて評価するまでもはないと思う。

約6000種類のカビやキノコの中から、体内でコレステロール合成を阻害する物質を73年に発見した。製薬会社が相次いで治療薬を発売し、世界で約3000万人が服用している。遠藤氏は「人への効果の道筋をつけるまで山あり谷ありで、途中で断念しようと思った」と語った。
『米ラスカー賞:心臓病治療に貢献、遠藤氏ら5人に - 毎日jp(毎日新聞)』より


 こういう天然物からの創薬として有名なのは古くはアスピリン、ペニシリンから近年ではFK-506が挙げられるが、スタチンも同程度に有名。ただし、その研究も一筋縄でいかなったこともよく知られている。このあたりに関しては『不確実性のマネジメント 新薬創出のR&Dの「解」』に記されている。
 微生物スクリーニングにより単離された「ML-236B」という物質がHMG-CoA reductaseを強力に阻害することを発見した遠藤ら。その作用をin vivoレベル、具体的にはラットで検証した。

「ところが、中央研究所の動物試験グループがラットで試験を行ってみたところ、なんと、コレステロール低下作用は全く見られなかったのである。(p.34)
(中略)
遠藤は一瞬耳を疑った。そして、次に瞬間、全身から血の気が引くのを感じたという。(p.35)


 ラットだけでなく、マウスでも作用は認められず、社内の動物研究グループは研究の中止を決定した…。そこからのストーリーは見事の一言に尽きる。
 簡略版だが、ネット上でも発見。
http://www.yakuji.co.jp/contents/yakugakusei/2007/g000008_20070501_p11.pdf


 上述のML-236Bを三共内で改良したもの。イヌの尿中に代謝物として出てきているらしい。一般名pravastatin、商品名はメバロチン。命名についてはよく知らないのだが、「メバロン酸」と「スタチン」を組み合わせたと推察。









 スタチンの基礎研究に興味をもったMerckの研究者達も創薬を始めた。実際のFirst in classは三共のメバロチンではなく、lovastatinらしい。構造が非常に似ているように見える。










 Merckが自社内でさらに改良を行い、創製されたのがsimvastatin (商品名Zocor、日本ではリポバス)。かつては売上高世界一の薬だったが、現在は特許切れ。








 これだけは構造がまったく違うのだが、作用機序は同じ(とされている)。Simvastatinがかつての売上世界一ならこれは現在の売上世界一。一般名atorvastatin (商品名リピトール)、現在はPfizerの薬だが、研究開発はワーナー・ランバート。あと2年位で特許切れ。


スタチンはコレステロール降下薬として万能な印象を受ける。しかし…
『日々の戯言〜研究とか薬とかST250とか〜 薬の効き目と科学の不確実性』に少しだけ記載したが、疾患の治療としては不十分。NNT(治療必要例数)が100を越えることを「実際に効くか効かないは、現時点では、まだ試さないと分からないとしか言い様がないのだと思う。」と表現しているが、この場合にはほとんど「効かない」と評しても良いのだろう。一つは、疾患のバイオマーカーとしての「コレステロール」に限界が来ているのだろうが、これはまたいずれ…。

 「コレステロールを下げる」ということに関しての創薬は既に熟成しているという話を誰かに効いたが、実際の治療に関してはマダマダですね。

  1. 2008/09/15(月) 15:35:53|
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化合物を含む米

 食の不安が話題になっていますが、餃子は国内が原因ではなさそうだが、米は国内が原因の様子。特に挙げられていたのが以下の二種類の化合物。


 アセタミプリド。ニコチン性アセチルコリン受容体の結合し、神経伝達を遮断するそうだ。さらなる機序については調べていないので不明だが、ツボクラリンやスキサメトニウムと同じようなphenotypeを示すのだろう。


 アフラトキシンB1。P450により変換され、DNAに共有結合し、癌を引き起こすらしい。Wikipediaによると「地上最強の天然発癌物質」らしい。おお怖い。


『九州、茨城菓子業者に流通 三笠フーズの汚染米 』

茨城県はせんべい業者で、8月に賞味期限が切れており、店頭に残っている可能性は低いという。この問題で菓子業者への流通が確認されたのは初めて。


((((;゜Д゜)))
  1. 2008/09/09(火) 22:49:03|
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企業の社会活動

 かなりテンションが低いです。こういうときに何かを書いてもいつも以上にnegativeになるので書かないのが吉なのかもしれません。たまたま目には行ってきたニュースでpositiveトーンになれそうなものがありました。

『アステラス製薬、9月9日(救急の日)に救急自動車を寄贈』

 まあ紹介だけして、特に何かを論ずるつもりはないのですが、こういうことはどんどん紹介していきたいと思います。
  1. 2008/09/08(月) 22:50:29|
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大麻の何が悪い?


 大麻(マリファナ)はアサの花や茎を乾燥し、刻んだものらしい。その作用を示すのは主にテトロヒドロカンナビノール。もちろんカンナビノイド受容体を作動することによりその作用(効果?)が得られるのだろう。勿論その類のものを使用したことはないのだが、きっと気持ちいいんだろうな、と想像されます。
 依存性はそれほど強くないらしく、とある論文*1によるとたばこやアルコールよりも弱いらしい。どうしてやめられないのかな、と素人的には思ってしまいますが、簡単にやめられるような人なら最初から使用しないか…。

*1
Hall, W., Room, R. and Bondy, S. Comparing the health and psychological risks of alcohol, cannabis, nicotine and opiate use. In: Kalant, H., Corrigal, W., Hall, W. and Smart, R. eds. The Health Effects of Cannabis. (pp 475-506). Addiction Research Foundation, 1999..


・追記…結局「何が」悪いのかは書いていないや(^^;)
  1. 2008/09/04(木) 23:06:10|
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塩野義製薬が買収

『塩野義製薬買収 生き残りへ米進出 : 経済 科学 ピックアップ : 関西発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)』

 塩野義は就職活動の時に受けませんでした。会社を選ぶ際に色々と優先順位をつけますが、とある条件がどうしても飲めなかったため、応募すらしませんでした。企業研究とかもしていないので、正直よく分かっていないことが多いです。大学院に寄付講座があって、SONGとか表のドアに書いてあったのを覚えています。ShiONoGiでSONG。

・塩野義製薬が米製薬会社のサイエル社を買収するのは、出遅れていた米国で販売体制を整えるのが狙い
・塩野義の海外事業は連結売上高の1割以下にとどまる。

記事の中で出ている抗肥満治療薬は、『開発中の新薬-塩野義製薬』を見る限りはS-2367でしょうか。Neuropeptide Y receptor antagonistらしい。

・塩野義が米国の販売網を維持するには、営業部隊の人件費など多額の費用が必要だ。「順調に新薬を開発できるかどうかが、今後の業績を大きく左右する」(証券アナリスト)という。

 こんなこと分かっているよ、わかっちゃいるけど簡単じゃないんだよぅ(>_<)まあ今日はこんなところで。


 
  1. 2008/09/03(水) 22:57:20|
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サリドマイド発売へ?

 三大薬害(四大薬害とも)*1にあげられるサリドマイド。アメリカではハンセン病の薬として発売されていますが、日本でも再発売の様相が出てきています。

『サリドマイド販売で議論開始 厚労省の検討会』
『薬のことなら薬事日報ウェブサイト - 【藤本製薬】サリドマイド、多発性骨髄腫治療で承認申請』

 今回の記事の件に関しては適応症として多発性骨髄腫が挙げられています。その他の腫瘍にも効くかもしれないとのことが、これは血管新生抑制作用によるものみたいです。アバスチンと同じ理屈ですね。胎児の催奇形性も血管新生抑制作用によるものみたいです。
 サリドマイドには、その他にもTNFαの抑制作用があり、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患などにも効く可能性も挙げられています。
 使用方法さえ管理できればまさしく「夢の薬」ですが、そう簡単なことではないとも思います。

*1
サリドマイド、スモン、クロロキン、(コラルジル)


 あれ?中枢の血管新生ってどうなっているんだろう…全く知らない(´・ω・`)
  1. 2008/08/26(火) 23:01:07|
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第一三共が買収

 『NIKKEI NET マネー&マーケット:国内株-注目株の動き:<東証>第一三共が続伸 インド製薬最大手の買収を正式発表』
 ジェネリックの問題点として認識しているのは基本的に『内科開業医のお勉強日記 : ジェネリック薬品の問題点も放送せよ!』に記されていること*1。特に問題だと思っているのは以下の点。

・医薬品の製品情報がなされない
薬理作用・副作用は先発品メーカーに聞いてくれという業者がいるほど。添付文書も劣化紙に印刷不明なものを添付している。


 そういう意味では第一三共(のような)会社が取り扱うなら大丈夫なのでは?と思う。実際田辺製薬も手を出し始めていたし、エーザイも取り扱っている*2
 ただ、「後発品」という点だけではなく、販路だとかその他のメリットがきっとあるのでしょう。
『VOICE OF INDIA - ヴォイス・オブ・インディア - ランバクシーと第一三共が都内で共同記者会見』

参考
『日々の戯言〜研究とか薬とかST250とか〜 後発品メモ』

*1 ただし、

・生物学的同等性試験がなされてない。溶出試験すなわち試験管内で薬の溶け方が一緒だと同じ薬効とみなしている。

という記載に関してはちょっと違います。現在では生物学的同等性試験は行われているという認識でいます。 最も生物学的同等性試験だけでは作用が同じか否かはわからないという点もある。

*2
エルメッド エーザイ株式会社 会社概要
http://www.emec.co.jp/kaisya/index.html
  1. 2008/06/12(木) 22:07:08|
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睡眠薬の不承認

 武田薬品工業のラメルテオンについて。
『UPDATE 1-EU agency recommends against Takeda's Ramelteon | Industries | Healthcare | Reuters』

Ambien…Zolpidem Tartrate、ω receptorに働き、GABAARのmodulator。日本での商品名:マイスリー。

メラトニン

ラメルテオン、素人目には似ていると映る。

 メラトニン受容体は複数あるが、特異性があるらしい…『日々の戯言〜研究とか薬とかST250とか〜 睡眠とGABA』
  1. 2008/06/06(金) 23:28:22|
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抗体だけじゃない

 つい先日、旬は抗体?とか書いた*1。実はこの日の昼食時に同期と「抗体の次をみなきゃだめだ、次を考えよう」とかいう話をしていました。まあなんとも大それた(^^;)ことを言っているわけですが、次のターゲットはRNAiの様子。まあ大方の予想通りというかなんというか…。

『薬のことなら薬事日報ウェブサイト - 【武田薬品】米バイオベンチャーと核酸医薬技術で契約−癌・代謝性疾患領域を強化』より

武田薬品は27日、米アルナイラム(本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)と、癌領域および代謝性疾患領域を対象に、RNAi医薬にかかるプラットフォーム技術に関する非独占的ライセンスならびに共同研究の契約を締結したと発表した。


 ううむ、武田さんは活発に動いているなあ。
 寡聞にしてRNAi医薬が上市されたという話は知らないのですが、現在の精力的な研究を見る限りもはや時間の問題かと思います。これも抗体同様特異性が高いので低分子量化合物に比べてadvantageを持っているように思います。
 Disadvantageはやはり体内動態(分解なども含めて)でしょうか?このあたりは良く知らないのでいずれちょっと勉強しようかと思います。
 RNAi医薬で毎回思うのはアンチセンス鎖医薬はどうなったのか?ということ。一時はブームだったが、ことごとく失敗に終わった…というような話を聞いたような聞いていないような…。と思って調べてみた。
『吉川医薬経済レポート:アンチセンス医薬品の可能性』より

アンチセンス医薬品は1980年代から研究されており,一時は医薬品としての可能性が危ぶまれたが,最近また,臨床開発が進展している。 Phase II以上の臨床品目の現状を一覧表示する。

 実際のリストを見ると結構ある。こちらも「薬」になりそうな感じですね。
 上記のRNAiの話も先日の抗体の話もこのアンチセンス差の話も「癌を対象としたものが多い」という印象が残ります。従来の低分子量化合物が限界なのか、単純に効果が強いのか市場がでかい(かつアンメットメディカルニーズ)のかその他なのかは良くわかりませんが。

*1
『日々の戯言〜研究とか薬とかST250とか〜 旬は「抗体で癌?」』
  1. 2008/05/28(水) 22:19:12|
  2. 薬・製薬会社
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旬は「抗体で癌?」

 旬なのか、もう刈り取りが終わりかけている時点での駆け込みなのかは良くわからないけど。


『薬のことなら薬事日報ウェブサイト - 【第一三共】独「U3ファーマAG」を買収−癌・抗体医薬を強化』

『武田薬品工業、米抗体医薬を88億ドルで買収へ - MSN産経ニュース』
『薬のことなら薬事日報ウェブサイト - 【武田薬品】アムジェン日本法人を買収‐バイオ医薬品事業を強化』

『薬のことなら薬事日報ウェブサイト - 【アステラス製薬】米バイオベンチャーを買収‐抗体医薬研究体制を強化』

『薬のことなら薬事日報ウェブサイト - 【エーザイ】米バイオ企業MGIファーマを買収』
『薬のことなら薬事日報ウェブサイト - 【エーザイ】バイオベンチャーの「モルフォテック」を買収』


 これらの会社の持っている化合物(抗体含む)にはまだPhaseの最初にあるものもあればもう上市されているものもある。唯一(?)上市されているのがミレニアム社のベルケイド(一般名ボルテゾミブ)。これ自体は抗体ではない。


 これはプロテアソーム阻害剤らしい。なぜプロテアソーム阻害剤が癌に聞くのか?詳しくないのでちょっと調べてみたところ、こちらに少し書いてあった。ううむ、わかったようわからないような…(^^;)。しかし、プロテアソームなんて阻害しちゃって…正常な細胞は大丈夫なの?



プロテアソームは正常細胞にもあるので、ベルケイドによって正常細胞が障害を受けることは十分考えられます。実際、ベルケイドには、強い副作用が報告されています。しかし、患者さんにとって、副作用のリスクよりも、病気が改善するというベネフィット(利益)のほうが大きい場合に限り、ベルケイドの使用が認可されることになりました。『ベルケイド(ボルテゾミブ) 薬の豆知識』より

 ああ、やはり正常の細胞にも影響はあるのか。それはそうだろうな。ただ、癌のような生命にかかわる病気の場合、「ある程度の副作用は仕方がない」という考え方もあるのだろう。もちろんそれをrefineして行き、QOLをあげるような努力(より良い薬?)も必要なのだろう。

 ところでリスク-ベネフィットの話は「タミフルの異常行動」の時も同様に思った。
  1. 2008/05/24(土) 22:28:00|
  2. 薬・製薬会社
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・博士号(薬学)取得後、とある製薬企業の研究者になりました。
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